クラシック音楽ファシリテーターの飯田有紗さんの新著「クラシック音楽への招待〜子どものための50のとびら」をご本人に紹介してもらった。
デノンブログでもお馴染み、クラシック音楽ファシリテーターの飯田有紗さんが、新しい書籍「クラシック音楽への招待〜子どものための50のとびら」(音楽之友社)を出版されました。デノンブログの読む音楽のコーナーで、贅沢にも著者自ら内容をご紹介いただきます。子どもから大人まで、だれにでも気軽にクラシック音楽を楽しんでいただきたい、という飯田さんの想いをお届けします。
だれにでもクラシック音楽への扉を開きたい
今年の3月に、新しい本を出版させていただきました。
「クラシック音楽への招待〜子どものための50のとびら」(音楽之友社)です。
この本は、これからクラシック音楽をいろいろ聴いてみたい人、なんとなく聴き続けて来た人、周りの人にもオススメしたいという人……などなどいろんな人に読んでいただける本です。「子どものための」とはしてありますが、実は大人の方々からも「わかりやすい」「知らないことがあった」というお声を、けっこういただいています。
たとえば、学校でもお馴染みの楽器、リコーダー。子どものころピロピロ鳴らしていたあの楽器が、実はその昔(17世紀)は合奏団のリーダー的存在の重要な楽器で、名曲もたくさん残されているんです。そういった楽器にまつわるお話しや、しかめ面のベートーヴェンが実は愛に溢れる人物だったこと、ショパンはピアノの先生でしたが、「3時間以上の練習はダメ」と言ったこと、「ド・レ・ミ…」という音の名前はある歌の歌詞に由来していること(「ドレミの歌」ではありません!)、音楽史でいう「古典派」の「古典」ってそもそもどんな意味なのか……などなど、クラシック音楽にまつわる様々な「とびら」をご紹介しています。

『クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら』
飯田有抄 著
クラシック音楽や芸術が大切なわけ
少しでもクラシック音楽に親しみを持ってほしい…そんな思いでこの本を書きましたが、実際のところ、今や音楽はさまざまなジャンルがありますし、ポップで聞きやすいものから、メッセージ性の強いもの、多様なワールドミュージックまで、同時代の刺激的な音楽にあふれています。
「なにもわざわざ、何百年も昔の、遠いヨーロッパ発の音楽を聴かなくたっていいではないか。クラシックってなんか難しそうだし、高尚っぽいし、長いし」
と、思うのはごく普通の感覚だと思います。
では、なぜ私がこうした入門本を書きたいと思ったのか、つまり、なぜ多くの人にクラシック音楽に親しんでもらいたいと思っているのか、それは私が日頃、「クラシック音楽ファシリテーター」という肩書きで活動している理由にもなっています。それについて私は、本書の「はじめに」に熱を込めて書きました。ここに引用してみたいと思います。
時代も国もぜんぜん違う音楽なのに、今の私たちの心にも届くなんて、不思議なことですよね。でも正直、クラシック音楽は「ちょっと退屈」とか「なんだかよくわからないなぁ」と感じる場合もあるでしょう。それも当然のことです。もともとは遠い国の、遠い昔の音楽なのですから。
知らない外国語で話をされてもわからないように、音楽だって実は「わからない」こともありえます。よく「音楽は国境をこえる」とか「音楽は世界の共通語」などとも言われますが、言葉でサラリと言えるほど、たやすいものではありません。
地球上にはいろいろな国や地域があり、それぞれの土地には長い歴史があり、人々の暮らし方や考え方、気候や自然との付き合い方が違います。音楽とは、そうした人の営みの中から生まれてくるもの。ですから、たくさんの「違う」音楽があるのです。日本にも古くから伝わる音楽がありますし、ヨーロッパ以外の各国にもそれぞれの音楽があります。それらがいともかんたんに、だれにでも全部「わかって」しまったら、かえっておもしろくないのかもしれません。
お互いに「わかりにくいもの」かもしれないけれど、それをわかろうとし合うことこそが、楽しくて素晴らしいことです。その豊かさこそが、人類の宝物です。そしてやっぱり同じ人間同士だから、時代も国も飛び越えて、わかり合えることは喜びです。自分が知らなかった世界や、新しいものの見方や感じ方に気づかせてくれるからこそ、私たちは日々、世界のいろいろな音楽を聴きたくなるのかもしれませんね。
(本文p2~p3より引用)
「多様性の時代」などと言われますが、実際のところ、自分にとってわかりにくい他人のこと、価値観や風習の違う人々のこと、歴史ある国々や奥深い文化のことなどは、そう簡単にはわからないこともありますし、わかり合おうとするのをあきらめたくなることだってあります。
でもきっと、音楽や美術やさまざまな芸術は、そんな私たちの凝り固まりがちな思考に揺さぶりをかけ、ほぐしてくれたり、想像力を刺激してくれたりする存在です。だから芸術は私たちにとってなくてはならないもので、大袈裟ではなく本当に、世界平和へと導いてくれるものだと思うのです。
子どもたちも、大人たちも、遠い異国の遠い芸術・文化に思いを馳せながら、でも何かしら自分と共鳴する部分を見つけて、“自分ごと”として受け取り、感動し、心を寄せる。そんな素敵な営みが、クラシック音楽との出会いの中で起こるといいなぁ、と思います。観葉植物のように、音楽が日々の暮らしにそっと潤いを与えてくれるかもしれませんし、自分にとって大きな救いとなる作品に出会うこともあるでしょう。この本が、そうした出会いへの扉にもなれば嬉しく思います。
ところで、本書にはコラムも数本ありまして、その中には「オーディオ」についての項目もあります(本書p.88)。私自身は子ども時代に、いわゆる“ラジカセ”で育ってしまったために、良い音での再生がどれだけ音楽の豊かさを伝えてくれるのか、ほとんど知らずに過ごしていました。流行歌やポップスはまだしも、オーケストラ曲などはラジカセでは魅力が半減!ずっとその良さがわからないままでした。
本書を手にとる子どもたちや、若い親御さんにも、「録音を再生する(鳴らす)ための専用の道具」であるオーディオの存在を知ってもらい、興味を持ってほしいなと願っています。
飯田有抄 プロフィール

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。「クラシック音楽ファシリテーター」を肩書としながら、クラシック音楽の普及にまつわる幅広い活動をおこなっている。音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆・翻訳、市民講座講師、音楽イベントの司会やトークの仕事に従事。ラジオやテレビなどのメディアに出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)、「さぁはじめよう!オーディオのある暮らし」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。