日本の放送局を支えた「デノンの音」を現代へ。Bluetooth対応レコードプレーヤー「DP-500BT」発表会レポート
日本の放送局を支え続けてきたデノンのターンテーブル。その伝統を現代へと継承する最新レコードプレーヤー「DP-500BT」が登場! ライターの杉浦みな子氏が、発表会での実機体験をレポートします。「なかなかの面構え」に宿る、妥協なき音作りとは?
デノンの最新レコードプレーヤーは10万円台のBluetooth対応モデル
デノン公式ブログをご覧のみなさま、こんにちは。ライターの杉浦みな子です。今回はデノンから新しいレコードプレーヤーが登場すると聞き、新製品発表会へ足を運んできました。

近年、アナログレコードは一過性のリバイバルブームを超え、音楽を楽しむ文化の一つとして定着し直された感があります。そんな中、デノンがアナログファンの期待を背負って送り出すのが、今回ご紹介する「DP-500BT」(希望小売価格:138,600円)です。
その魅力をざっくり表現するなら……「デノンが歩んできた110年を超える歴史と、Bluetoothという現代のリスニングスタイルを融合させた注目モデル」といったところでしょうか。詳細をレポートしていきましょう!
「日本のラジオの音」を作ってきた、デノンの矜持
発表会場に訪れたプレス陣を前に、「DP-500BT、なかなかの面構えじゃないかと思っています」と得意げに挨拶をしたのは、営業企画室の田中清崇。そこで語られたのは、デノンと日本の放送文化の深い関わりでした。
田中:「かつて、日本のラジオ放送局の95%以上にデノン(当時はデンオン)のターンテーブルが納品されていました。つまり、50代以上の方が青春時代にラジオから聴いていた『思い出の音』の正体は、デノンの音だったんです。以来、私たちは一度もその灯を絶やすことなく、アナログ再生機器を作り続けてきました」
その伝統を継承するレコードプレーヤーのフラッグシップモデルとして君臨するのが、2023年に登場した「DP-3000NE」。そして、そんなフラッグシップの直系として誕生したのが、今回の「DP-500BT」です。カジュアルながら、デノンが作り上げてきた「日本の音」を次世代に受け継いでいく1台と言えるでしょう。

中身はフラッグシップ譲りの本格派
「10万円台のBluetooth対応レコードプレーヤー」と聞くと、「最近よくあるカジュアル系の製品か」と思う人もいるかもしれませんが、「DP-500BT」の中身はフラッグシップ譲りのストイックな作りです。
田中:「最近はBluetoothでの音楽再生も高音質化しています。ですが、途中の伝送経路が高音質化しても、元のレコードプレーヤーの音が良くなければ意味がありません。なので、大前提として、レコードプレーヤーの本物を作るという意気込みで開発したのがDP-500BTです。単にBluetooth対応というだけではなく、基本のアナログ再生クオリティを高めることにこだわりました」
ベルトドライブ方式を採用する回転部には、フラッグシップと同様の「リジッド構造」が採用されています。超高精度スピンドルと速度センサーを用いた正確なベルトドライブの組み合わせにより、安定した回転を実現。アナログ再生の土台となる安定性に、プロフェッショナル機譲りのこだわりが見てとれます。
ちなみに回転数は、33 1/3回転、45回転、さらに78回転にも対応しています。 SP盤も含めた幅広いコレクションが楽しめます。

さらに、デノン伝統の「スタティックバランスS字型トーンアーム」もフラッグシップと共通で、独自のトラッキングエラーカーブに基づいた設計が施されています。これにより、業務用機器と同レベルのトレース能力を獲得。使い勝手の良いS字アームでありながら、中身はシビアな計算の上に成り立っているわけですね。

ユニバーサルタイプのヘッドシェルは交換可能で、デノンの高性能MCカートリッジ「DL-103」なども使用できます。

そして内部には、MM対応のフォノイコライザーが搭載されていますが、これも決して初心者向けの付録ではありません。デノンのHi-Fi製品と通底するシンプル & ストレートな回路構成とし、しっかり再生クオリティにこだわったフォノイコライザーを内蔵しています。

田中:「外部のフォノイコから本機の内蔵フォノイコに切り替えたときに、がっかりさせない自信があります。カートリッジからの微弱な信号をアンプ内蔵のフォノイコまで送らずに、レコード針のすぐ近くで増幅する方が音質的に有利になるというメリットもありますしね」
加えて、Hi-Fi製品やDP-3000NEの開発で培ったカスタム品のコンデンサーなど、高品位なパーツも惜しみなく投入。手軽に使いたい入門ユーザーのニーズに応えつつ、妥協なしの構成としています。

機能面では、「DP-500BT」の本体フロントに音量調整ボタンを備えているのもポイント。Bluetoothで接続した際に、機器側にボリュームがついていない場合でも、「DP-500BT」側で音量をコントロールできます。

また、レコード再生終了時に自動でトーンアームを上げて、プラッターの回転を止めてくれる「オートリフトアップ&ストップ機能」など、日々のリスニングを快適にする便利機能も備わっています。
サウンドマスター・山内慎一が語る「現代の音」
続く試聴セッションでは、「DP-500BT」の音を手がけたデノンの音の門番、サウンドマスター・山内慎一が登場。そこで語られたのは、「ノスタルジーではない最新の音へのアップデート」という「DP-500BT」の開発思想でした。

山内:「オーディオ環境は時代と共に進化しています。昔のプレーヤーを現代のシステムに繋ぐと、変わらない良さがある一方、もう一歩の表現力が欲しいと思うこともある。我々は、昔の録音でも今のオーディオの世界観にアップデートしたい。こぢんまりまとめるのではなく、現代の製品だから実現できる広いサウンドステージやスケール感で、音楽のエモーションが伝わるように。そこに、デノンのサウンドフィロソフィーである『Vivid & Spacious』を突き詰めました」

試聴はデノンの試聴室で行われました。まずは2Lレーベルから、お馴染み「Quiet Winter Night」の再生でスタート。針を落とした瞬間から、録音場所である教会の全景が見えるようなサウンドステージが広がります。フォノイコライザーの素性の良さが、空気感の再現力に直結しています。
男性ボーカルのファルセットが楽しめるアーティスト、Rhye(ライ)の再生では、エモーショナルで耳の奥まで浸透してくるようなボーカルが見事。また、Fleetwood Mac「Tango in the Night」 は87年の録音ですが、「DP-500BT」で聴いて古臭さは一切感じません。リズムのビートやキレが際立ち、音楽が生き生きと躍動しています。
Phi-Psonics「Expanding to One」 は、女性ボーカルとエレクトリックピアノが印象的な楽曲で、声の浸透力が高い。終始、「DP-500BT」のソリッドな魅力が試聴室を包み込んでいました。
「本格派」と「カジュアル」を両立するデノンの新スタンダード
「DP-500BT」は、長年レコードを愛してきたオーディオファイルには「納得のクオリティ」を、そしてこれから始める新しい世代には「ワイヤレスで手軽に使える自由」を提供するモデルと言えるでしょう。

放送局の現場で「日本の音」を支えてきたデノンの矜持を、次世代へしっかり継承する1台。ノスタルジーに浸るのではなく、今の感性でアナログを楽しむ……そんな豊かな音楽体験を、ぜひこのレコードプレーヤーで味わってみてください。

杉浦みな子 プロフィール

1983年生まれのオーディオ&サブカルライター。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。医療系ベンチャーに4年勤務したのち、2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。
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